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2021.03.15 センターお知らせ 

「原材料から廃棄まで 製品に関わる全ての人とともにエコを考える」花王エコラボミュージアム その2

近畿ESDセンターは、開設4年目となりました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和2年度は4つの拠点に対して、コロナ禍の状況に配慮した上で対面またはリモート等、拠点に可能な形で取材を実施することができました。
7月23日に和歌山市にある花王エコラボミュージアムに、オンラインで取材をさせて頂きました。
館長の細川さん、室長の丸田さん、高橋さん、麻田さんにご協力いただき、企業としての花王の歩みや、花王が現在進めておられる事業について伺った後、カメラで映しながら館内の展示を案内していただきました。

「原材料から廃棄まで 製品のライフサイクルを通して全てのステークホルダーとともにエコを考える」花王エコラボミュージアム その1はこちら
レポートその1では、花王の環境に配慮した事業活動についてお伝えしましたが、その2では、花王エコラボミュージアムから提供される情報や企業としての取組をどのように学校での環境学習に活用できるかについて元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。

<花王エコラボミュージアム提供写真>

【花王エコラボミュージアムの見学】

花王エコラボミュージアムは2011年に開設されました。来館者は年間(2020年は除く)約12,000人で、見学は完全予約制(平日のみ)で行っています。見学者は、学校関係(小・中・高校生)、一般の方、ビジネスパートナー(企業・官公庁など)と、多岐にわたっているそうです。2018年度では、和歌市内の小学校43校、市外(和歌山県内)から42校の計85校の学校から見学を受け入れました。特に3年生と5年生に社会科と関連したプログラムを提供しているため、社会科見学として和歌山市内から3年生が多く訪れ、5年生は大阪府南部から来館する学校もあるとのことです。
今年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、残念ながら見学は実施していませんが、学校とオンラインでつないで館内を紹介し、学習プログラムを届けるなどの工夫をされています。オンラインにより、遠方の学校ともつながることができるというメリットもあります。

【館内の展示から一緒にエコを学ぶ】

製品のライフサイクル(原料から製造、物流、家庭での使用、廃棄)すべての段階で多くの材料を消費したり、CO2や排水が発生したりしますが、花王エコラボミュージアムでは、それぞれの段階で、どのように環境にやさしいことができるかという取組を紹介しています。

■「地球環境を考えよう」
いま、地球でなにが起きているのか、私たちになにができるのか。「温暖化する地球」「いのちとくらしを支える水」「生物多様性のもとに」の3つのテーマで、地球環境のいまを紹介しています。
「花王のエコデザイン」
花王の環境に配慮したモノづくりや先端のエコ技術をご紹介しています。製品の原材料を選ぶ(原材料調達)、製品をつくる(生産)、運ぶ(物流)、製品を使う(使用)、ごみに出す(廃棄)までの、製品のライフサイクルにおける、さまざまな取組を、展示や映像、体験プログラムなどを通じて楽しみながら理解できます。
■「原材料をえらぶときのエコ」~石けんや洗剤は、何からできているの?
洗剤や化粧品などの原料として大切な役割を果たす「界面活性剤」という成分は、アブラヤシからとれる「パーム油・パーム核油」からつくられます。アブラヤシが育つのは、熱帯域。その地域の森林は、多くの生き物が個性とつながりを持って暮らす「生物多様性」が存在する場所です。そして、森林は光合成により成長時には二酸化炭素を吸収する役割を果たすため、地球の気候を安定させるためにもとても重要だということです。そして何より、石油系の原材料を使うよりも再生可能です。
ところが、近年、世界的なパーム油・パーム核油の需要の拡大に伴い、アブラヤシの農地をつくるために、森林が違法に伐採され、自然が壊されることが深刻な問題となりました。これ以上貴重な森林が壊されることがないようにと2004年につくられたのが、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)という国際組織です。花王もこれに賛同しRSPOのメンバーになっています。RSPOでは、耕作面積を広げるための過度な森林破壊や子どもたちが労働力に使われるという人権問題にも取り組んでいます。
このコーナーでは、日頃使っている石鹸や洗剤の原料を知ることで、世界の遠い国の人々の生活が、私たちの生活とつながっているということが見えてきます。何気なく使っている日用品や、食料品に対してその原料の調達先や生産地で起こっている問題を知り、そこの自然環境や人々の安心・安全な暮らしを守るためには、安全性や環境に対する負荷を考えて製品を選ぶことが大切だということに気付き、自ら学ぶ環境学習の導入にもなるでしょう。

<花王エコラボミュージアム提供写真>
■「はこぶときのエコ・お店でのエコ」~製品をお店に届けるために運ぶときには、どんな工夫があるの?
さまざまな製品を工場から物流センターへ、さらに小売店に輸送するために、多くの段ボールが使われています。これらの段ボールは、輸送の段階では大切な役割を果たしていますが、役目を終えると、またリサイクルされることになります。輸送機能を十分に果たしながら、少しでも環境負荷を少なくするため、段ボールの厚さや形状についてさまざまな工夫をしています。また、花王製品に使用する紙・パルプ、包装材料などを再生紙や持続可能性に配慮したものに切り替えてきました。この結果、前年比、年間約150トンのCO2排出量の削減を実現しています。
このコーナーでは、製品を小さくしたり積み方を工夫したりして、一度にたくさんの製品を運ぶことで、輸送回数も時間も節約できることが分かります。こうすることで、トラックの燃料消費量を減らし、二酸化炭素の排出も削減できるのです。地球環境のこと、地球温暖化と私たちの生活とがつながっていることがここでも理解できます。
製品の輸送において、製品を守るために本当に必要な最小限度のパッキングを行うための研究も進められていることが学べますね。私たちの買い物の場面でも、包装紙や手提げ袋、あるいは製品を入れるための箱において、中身を保護する必要性を超えた過度な梱包など、見た目のきれいさに対して、必要なものと無駄なものを見極める視点が大切だと思います。

<花王エコラボミュージアム提供写真>
■「製品をつかうときのエコ」~毎日のくらしの中で、わたしたちにできるエコってどんなこと?
花王の技術として、濃縮液体ですすぎを1回で済ませることのできる洗剤の研究開発や、製品の中身重視で、詰め替えにかかる最小のエネルギー負荷を考慮した容器なども展示されています。技術の進歩によって、使い終わった洗剤容器が廃棄されたときに驚くほど少ない体積になっていることが分かります。
花王では、製品のライフサイクルの各場面でCO2がどのくらい出ているのかを調べた結果、家庭での使用時とパッケージ廃棄(ごみを捨てるところ)時で、なんと全体の半分以上のCO2を出していることが分かりました。つまり、消費者である家庭・社会と一緒にエコに取り組んでいくことが大事だという訳です。
このコーナーでは、使用と廃棄の場面でCO2 が最も多く排出されているという事実は、子どもたちに自分の生活を振り返らせるよい機会になると思います。
水を使うことはエネルギーを使うことになります。温水だと、温めるのにさらにエネルギーが必要で、CO2の排出に結び付きます。家庭での調理、食器洗い、歯磨き洗顔、入浴、洗濯など水を使うすべての場面を取り上げて考えることができます。そして、使い終わったときにその容器に詰め替えて使うことで、廃棄物の削減とCO2 削減のエコな生活につながることが分かり、既に家でそういったことが定着している子どもたちは、改めて詰め替え商品の意味に気づくでしょう。

<花王エコラボミュージアム提供写真>

【日常の暮らしのなかからエコに気付き、行動につなげる】

家庭生活は、時代とともに変化してきました。昔は手仕事だったものが洗濯機や掃除機などの出現で家事に費やす時間の短縮が可能になって暮らし方も変わってきました。そして、近年では家庭の生活スタイルがさらに変わり、共働きの家庭では何日分かの洗濯物をまとめて洗濯することもあります。そうすると、少ない水でも大量の洗濯物が洗え、きれいに汚れを落とすことのできる洗剤の必要性が生まれます。消費者のニーズに対する生産者の対応があり、生産者と消費者の関係性が見えてきます。
持続可能な社会を目指すためには、地球環境を守るためにお互いの協力が必要です。学校教育においても、家庭を巻き込んで保護者と協力した学習につなげることも可能ではないでしょうか。地球の問題は、自分の問題でもあるという見方が生まれることでしょう。
花王エコラボミュージアムの見学を通して、今まで気づいていなかった生産者側の様々な思いや工夫を知ることで、使う側としての責任を考えて自分たちの生活でどんな工夫ができるかを探る授業に結び付けることができるのではないでしょうか。

(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)
【お問い合わせ】

花王株式会社 花王エコラボミュージアム
細川:hosokawa.yasunori☆kao.com (☆を@に変えてください)
丸田:maruta.kazunari☆kao.com (☆を@に変えてください)
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