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2021.03.09 センターお知らせ 

「原材料から廃棄まで 製品に関わる全ての人とともにエコを考える」花王エコラボミュージアム その1

近畿ESDセンターは、開設4年目となりました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和2年度は4つの拠点に対して、コロナ禍の状況に配慮した上で対面またはリモート等、拠点に可能な形で取材を実施することができました。

7月23日に和歌山市にある花王エコラボミュージアムに、オンラインで取材をさせて頂きました。
花王は2009年に「花王 環境宣言」を発表し、事業活動すべての段階での環境負荷を低減させるとともに、地球環境の保全と社会のサステナビリティの実現に向けた取り組みを進めておられます。花王エコラボミュージアムは、よりよい地球をめざして一緒に取り組んでいく「いっしょにeco」活動の重要性を伝えることを目的として2011年に和歌山事業場内にオープンし、原材料から廃棄までの製品のライフサイクルの各段階における、さまざまな環境に対する取り組みや最新の環境に関する情報を紹介しています。
取材では、館長の細川さんはじめ、丸田さん、高橋さん、麻田さんにご協力いただき、企業としての花王の歩みや、花王が現在進めておられる事業について伺った後、館内の展示をカメラで映しながら案内していただきました。

<花王エコラボミュージアムにリモート取材中>

【花王の環境宣言】

花王株式会社の原点は、130年前の1890年(明治23年)に顔洗い用の石鹸を開発・発売したことに始まるそうです。それまでは、顔を洗えるくらい品質の良い国産の石鹸が少なかったそうで、発売した高級化粧石鹸「花王石鹸」が、社名の由来だということです。当時、洗濯用が「洗い石鹸」、化粧石鹸が「顔洗い」と呼ばれていたことから、「カオ(顔)石鹸」と名づけることとし、「花王」という文字が選ばれたそうです。

2009年に、花王は「環境宣言」を発表し、原材料の調達から生産、物流、販売、使用、廃棄までの、製品がかかわるライフサイクル全体を通じて、消費者をはじめビジネスパートナー(原料の供給国や受給先、製造委託先など)や社会(地域社会、NGOや行政など)など、さまざまなステークホルダーと協働で「いっしょにeco」を推進していくことを表明しました。
この宣言の背景には地球温暖化による気候変動や資源の枯渇、生物多様性の喪失という、地球規模での課題に人類が直面しているという状況の中、花王では「環境への負荷低減をベースとしたモノづくり」を進め、化学物質を取り扱う企業としての責任を果たしながら、自然と調和するエコロジー経営を推進すべきだという基本方針があります。
また、製品のライフサイクル全体でCO₂排出量や水の使用量を削減していくためには、消費者、ビジネスパートナー、また社会全体といっしょになって取り組むことが重要だと考えているからです。
花王の環境への取り組みは、“いっしょにeco”ウェブサイトで大変分かりやすく紹介されています。

<花王エコラボミュージアム提供写真:(株)花王 和歌山工場>

【花王工場の敷地内に設置された研究エリアETRCと花王エコラボミュージアム】

日本国内には花王の工場が10か所あり、その中の一つで西日本の生産拠点となっているのが和歌山事業所です。甲子園球場13~14個分くらいという広大な敷地のなかに、花王の環境宣言の理念に基づきエコロジー経営を具現化する総合開発拠点「ETRC エコテクノロジーリサーチセンター」という研究施設が2011年に開設されました。
ここでは、植物・バイオマス研究なども行われ、植物油脂などの再生可能原料を事業分野で高度に利用するための技術開発にも取り組んでいるそうです。長期的なテーマとして、特に水、食糧、グリーンケミカルスの分野で、将来の事業の核に育つような次世代環境技術開発が行われています。
こういった考えや技術を社会に広く発信する一翼を担っているのが、ETRCの1階に開設された「花王エコラボミュージアム」です。ここでは、「温暖化する地球」「いのちとくらしを支える水」「生物多様性のもとに」の3つのテーマで、地球環境のいまを学習します。先端のエコ技術の説明のほか、映像や体験プログラムによって地球環境や花王の環境技術を体験することができます。花王エコラボミュージアムは、製品を提供する側である花王が、キャッチフレーズ「いっしょにeco」を推進していくことを来館者に呼びかける場でもあります。



<館内の展示を案内していただいているところ>

それでは、“いっしょにeco”ウェブサイトにある「花王のエコへの取り組み」のページから、花王の研究や取組の一部をごく簡単にご紹介します。詳しくは、是非ホームページをご参照ください。

【花王の環境への取組み】

<材料を選ぶ>将来を見据えた藻類の研究
現在、洗剤やシャンプー等の原料としてアブラヤシからとれるパーム核油が使われています。パーム油は、将来の食料不足に対応する食料としての需要が増えていくことが予想されています。そのようななか、花王は、アブラヤシに代わる、食料と競合しない、より環境にやさしい原料の調達に向けて、「微細藻類」の研究を重ねてきました。世界の多くの研究機関も、藻類に着目しています。

<花王のホームページより:さまざまな性質を持つ藻類を培養して分析>

<製品をつくる>微生物の力を借りて、排水をきれいにする
製品の製造プロセスでは、たくさんの水が使われます。花王は、工場で使う水をできるかぎり効果的に利用し、最終的に海や川へ戻す際には、環境基準に適合したきれいな状態にして排水しています。
和歌山県工業技術センターが食品加工における排水処理のために開発した、食物連鎖を活用した工場排水技術を化学系排水にも適用させるという目的で、共同研究に取り組みました。この技術では、排水の中にイトミミズの寝床となる、和歌山特産のパイル繊維でつくられたシートを入れることで、イトミミズの増殖を促すため、イトミミズによる微生物の分解が増え、最終汚泥を大幅に削減することができるそうです。

<花王のホームページより:イトミミズが育つパイル繊維のシートを設置する>
<製品を運ぶ>共同輸送による効率化を推進
花王では、製品をより環境に負荷をかけず、効率的に運ぶために、早い時期からモーダルシフトに取り組んできました。「モーダルシフト」とは、輸送手段をトラックから鉄道や船舶など、一括大型輸送に変えることによってCO2排出量を減らすことです。

<花王のホームページより:船にコンテナを運び込むトレーラー>

【次世代のことを考えた生産と消費】

ご紹介したこれらの取組の他にも、ビジネスパートナーとの協働によってより高度な研究技術開発を可能にし、社会的貢献が認められることで社会全体の持続可能性への力ともなることがうかがえます。その根底には、SDGsの目標達成にも貢献するといった、企業の利益だけでなく地球環境を守るという前提が必要とされているのだと思います。

今回、花王エコラボミュージアムを取材させていただき、環境に配慮したモノづくりという企業の経営理念や取組を知り、生産者と消費者の立場など多角的にものごとをとらえることで、お互いの協力の大切さを実感しました。
また、取材を通して、130年前に日本で「顔を洗う石鹸」を提供した花王が、絶えることなくその技術の開発を続け、世界とのつながりに至っているということを知りました。企業の取組は、人がクローズアップされることは少ないように思いますが、実際には、花王の長い歴史において多くの技術者や研究者たちが苦労を重ねて歩んできた道筋だと思います。このような視点で考えると、私たちはいつの時代も、よりよい生活を求めて努力をしている訳ですが、先人の功績に感謝するとともに、これから先どのようなことを大事にすればよいか、自分にできることはどんな事だろうと生活を振り返ることが必要ではないでしょうか。
地球環境を守ることは、地球上のすべて生きものにとって大切なことです。そして、次の世代にも、その次の世代にも必要不可欠なことだと思います。
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)

【お問い合わせ】

花王株式会社 花王エコラボミュージアム
細川:hosokawa.yasunori☆kao.com (☆を@に変えてください)
丸田:maruta.kazunari☆kao.com (☆を@に変えてください)
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