平成29年度、近畿ESDセンターでは、学校教員のESD推進を応援する拠点を取材しています。
11月2日に奈良教育大学を訪問し、近畿ESDコンソーシアム 事務局長の中澤静男さん(同大学准教授)にお話を伺いました。
奈良教育大学は 2014~2016年度の3年間で、文部科学省のユネスコ活動補助金「グローバル人材の育成に向けたESDの推進事業」を受託し、「奈良ESDコンソーシアム」という名称で、ESD推進の拠点作りに取り組んできました。今年度からは、「近畿ESDコンソーシアム」と名称を改め、近畿地方全域を視野に、ESD推進拠点として取り組みを継続しています。
2014年に国連持続可能な開発のための10年の後継プログラムとして採択された「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」が定める5つの優先行動分野の一つに、教員への支援が挙げられています。また、2015年9月に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標4に教育が位置づけられたほか、H29年度版学習指導要領の前文に「一人一人の児童が、(中略)持続可能な社会の創り手となることができるようにする」と明記され、今後ますます学校教育におけるESDの推進は重要になっていくと考えられます。
以下、近畿ESDコンソーシアムの、大学機能を活かした現職教員向けの取り組みについて、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
未来の地球を考える事ができる子どもたち、明日の社会を担う素地を持った人材を育てるために、「授業が上手くなりたい。意欲的に考えさせる授業をしたい。」とお考えの先生方へ
近畿ESDコンソーシアムでは、現職の先生方や教員志望の学生を対象に、ESDに関する指導力の向上を目的としたセミナーや勉教会を実施しています。
◆ESD連続セミナー
奈良市、橋本市で開催しているESD連続セミナーでは、下記のような段階を踏んで、最終的に参加者が自分でESDの指導案を作り上げることを目標としています。
①持続可能な開発目標と地球的諸課題 <SDGsへの関心と理解を深める>
②ESDの学習理論 <ESDで育みたい能力・態度、価値観等>
③教材開発の方法 <文献調査・現地調査・インタビュー調査>
④優良実践事例の分析<単元のデザイン力をつける>
⑤ESD学習指導案の検討 <セミナーのメンバーで相互に協議>
奈良市で開催するセミナーでは、20数名が参加して、グループに分かれた討議タイムなど、アクティブラーニング形式で進めています。毎月1回、夜の7時から3時間程度開催しており、学校が終わってからの途中参加や、奈良市以外からの参加もあります。大切なのは、学びたいという気持ちなのだということが、参加者から伝わってきます。
過去に講座を受けた先生方が作成した指導案も、近畿ESDコンソーシアムのウェブページから見ることができます。
◆授業づくりセミナー
近畿ESDコンソーシアム構成団体の社会教育施設と連携したセミナーです。
奈良国立博物館、奈良県立万葉文化館、森と水の源流館といった社会教育施設の学芸員から情報の提供を受け、自分の担当学年の、どの科目、どの単元に活かせるかなど、授業の構想を立てます。大学教員からも助言を受けながら指導案づくりを進め、実際にクラスで授業の実施を目指します。自分がイメージする授業づくりに向けて、とても手厚いサポート体制が整っています。
写真:授業の構想を発表し、森と水の源流館スタッフの助言を受ける教員
◆学ぶ喜び・ESD連続公開講座
毎回、多彩なゲストを講師に招き、豊富な経験を基にESDを語っていただきます。ESDだけでなく、先生方が日々悩んでいる授業の進め方、学級経営、生徒指導のことなどに、新たな視点や解決策を見出すきっかけを与えてくれる機会となり得ます。
以上、3つのセミナー・講座をご紹介しましたが、これ以外にも研究会・勉強会を実施していて、参加の申し込みが可能です。
「その2」に続く
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)