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2020.10.12 センターお知らせ 

「地域の記憶を描くふるさと絵屏風を持続可能性な社会の人材育成につなげる」山内エコクラブ その1

近畿ESDセンターは、開設4年目となりました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和2年度は4つの拠点に対して、コロナ禍の状況に配慮した上で対面またはリモート等、拠点に可能な形で取材を実施することができました。
7月17日に滋賀県甲賀市を中心に活動する山内エコクラブを訪問し、代表の竜王真紀さんにお話をうかがいました。

竜王さんは、市の高齢者支援を担当する保健師が本職で、その経験も生かして、地区内の少子高齢化が進む状況の中、「回想法」を用いた取組をされています。昔の経験や思い出を語り合う「回想法」によって、高齢者が昔を懐かしむとともに自信を得て社会参画し、地域の展望を見出していくことにつながります。
レポートその1では、山内エコクラブ発足の経緯とその主な活動の様子についてお伝えします。その2では、地域の小学校と連携して展開されている具体的な実践について、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。

【山内エコクラブの発足と「ふるさと絵屏風」作り】

今から11年前に、当時の山内小学校の校長先生の声掛けで集まった5年生児童の活動が、山内エコクラブの始まりです。地域の水文化について調べた子どもたちの主体的な取組が評価され、「全国川づくりワークショップ」で準グランプリを獲得したことで、活動の継続への意欲づけとなったそうです。「地域に自信と誇りと夢を」「里山の智恵が地域の未来をつくる」をスローガンに、地域資源を活かして地域が元気になる仕組みづくりを目指して発足した団体です。竜王さんご自身も保護者として、また地域の保健師としてエコクラブの活動に関わっておられました。

その後、学校内の活動から公民館活動として位置付けられ、子どもたちが地域づくりの調査結果をまとめて発表し、高齢者がそれを応援するという関係性ができました。子どもたちと高齢者が民意伝承活動を続けていく中で、少子高齢化の影響もあり、エコクラブの子どもたちの人数も次第に減っていきます。そこで活動の対象中心をお年寄りに移して、高齢者が活躍できる場づくりをしていこうという方向性が生まれました。
歴史が古い山内には、自然や寺社にまつわる伝説や民話が語り継がれています。現代では希薄になりつつある助け合いや支え合いの精神、自然との共存、環境に配慮した暮らしが当たり前のように存在していました。やがて小学校も閉校となり、若い者が土地を離れていくことで、50年、100年後には、そんな生活の証が残っていないのではないかと案じたそうです。
お年寄りだからこそ語れる昔の生活や先人の知恵を、後世に残していく必要があるという想いから、滋賀県立大学の上田洋平氏が発案した「心象絵図」(高齢者の五感の記憶に残された原風景や地域の生活ものがたりを一枚の絵図「ふるさと絵屏風」に仕上げるもの)の手法に基づき、山内のふるさと絵屏風づくりをスタートさせることになります。山内地区には、黒川、黒滝、猪原、笹路(そそろ)、山中、山女原(あけびはら)という、集落ごとのまとまりが6地域あります。その地域ごとに、小学生も一緒になって高齢者から昔の様子をヒアリングし、聞き取った内容を高齢者と共に大きな絵屏風に描いていきました。わずか2年足らず(2017~2018年)で、見事に6枚のふるさと絵屏風を作り上げたそうです。
この取材を行った当日は、取材場所の公民館(六友館)内に、ふるさと絵屏風6枚すべてを展示してくださいました。どの地区の絵屏風も、四季の風情を織り交ぜて色鮮やかで、しかも一つ一つの場面が細部に渡って丁寧に描かれた見事なものでした。時代背景は同じでも、一枚ずつ描き手が違うので、独特の味わいがあります。昭和10~20年代の暮らしぶりが鮮やかに描かれています。

≪山内ふるさと絵屏風 猪鼻・笹路版≫
「高齢者が生きてきた生活史はかけがえのない資産であり、その記憶を回想することは、脳の活性化だけでなく精神的な安定にもつながる。また、その知恵を活かすことで、高齢者の社会参加、世代間交流等へとつなぐことができる。」と竜王さんは仰っています。
山内エコクラブが作成した「ふるさと回想のススメ」(令和2年3月発行)の中では、次のように書かれています。
―このふるさと絵屏風制作は、「地域をつくる回想法」の一つでもあります。高齢者自身が語り部となって時と人のつながりを浮き彫りにしていきます。語りによって隣近所での井戸端会議や共同作業、人と人との助け合い、おたがいさま文化、自然や動物との共生、水をたいせつにする心、暮らしの中での工夫など日本人が持ちえた心を次世代につなぐことができます。回想法を通じて高齢者は、過去を懐かしみ楽しむだけではなく、「人と人の絆」の伝承者、発信者として社会参画し、「地域をつくる」ために貢献するという重要な役割を担う存在に変わります。―

≪山内ふるさと絵屏風 山中版≫
こうしてみてみると、地域の物、人物、文化(伝統行事)、そして絵屏風に描かれているような暮らしの中の一コマさえも立派な地域資源と言えるのではないでしょうか。それらを語り継ぐことの大切さをこの取材を通して学びました。
総合的な学習の時間などを活用して、お年寄りと児童・生徒との交流を行うなど、学校と地域との連携を考えておられる先生方も多いと思います。地域のお年寄りに昔の話を聞くというのはどうでしょうか。ふるさと絵図づくりまでできれば大変素晴らしいですが、高齢者の方から聞き取りをするだけでも、子どもたちにとっては地域を見直すよい機会になると思います。お年寄りの記憶に残る風景・食事・遊び・仕事・年中行事などの懐かしい思い出が、五感を通した音・におい・味・手触り・色彩といった感触とともによみがえって来るのではないでしょうか。そこには、自然の恵みを最大限に利用した暮らしの営みがみえてくるはずです。ふるさと絵屏風には四季が描かれており、季節に応じた暮らしや季節感のある食べ物があります。現在の暮らしは、年中快適な室温が保てたり、食べたい野菜がいつでも食材に使えたりと、ある意味、進歩・発展したように感じますが、「持続可能な社会に本当に必要なものは何だろう」という疑問もわくはずです。子どもたちと考え、話し合うことで、新たな価値観を生み出せるのではないでしょうか。

≪山内ふるさと絵屏風 黒川版≫

【回想ツーリズムへの広がり】

山内エコクラブでは、ふるさと絵屏風の他にも、箱膳ツアー、健康ウォークなど、高齢者から語りを聞きながら、昔の暮らしぶりを体験する回想ツーリズムを組んだ活動を進めています。高齢者にとっては、懐かしい昔を回想することで地域資源の価値に触れ、自己の再確認にもなり、体験するシニア世代や若者にとっては、生き生きとした語りとともに昔の暮らしぶりに触れることで、その当時に想いを馳せると同時に、時代を超えて大切なもの、人とのつながりなど、改めて現在の生活に生かせることを見出す契機となるでしょう。
レポートその2では、山内エコクラブが地域の小学校と連携して展開されている具体的な実践を中心に紹介します。
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)
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