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2020.09.28 センターお知らせ 

「日本に伝わる木造建築文化を創り上げた大工道具から見える匠の技と心」竹中大工道具館 その2

近畿ESDセンターは、開設4年目となりました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和2年度は4つの拠点に対して、コロナ禍の状況に配慮した上で対面またはリモート等、拠点に可能な形で取材を実施することができました。

7月9日に神戸市にある、竹中大工道具館を訪問し、館長の西村章さんにお話をうかがいました。

「日本に伝わる木造建築文化を創り上げた大工道具から見える匠の技と心」竹中大工道具館 その1はこちら

レポートその1では、竹中大工道具館が日本で唯一の大工道具博物館として設立された経緯と、その素晴らしい展示物を中心にお伝えしました。その2では、道具館でできる木工体験や、所蔵する豊富な大工道具や関連資料について、研修や学習など学校でのプログラムへの活かし方を中心に、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。

【木工室で大工道具や木に触れる】

竹中大工道具館には、地下2階の展示フロアの横に設備の整った木工室が設けてありました。校外学習の一環として、見学の際に学校4年生以上を対象として行われているプログラムがあります。

◆講義「大工道具と木のひみつ」【40分】
・ビデオ『大工さんってスゴイ!』(15分)
・大工道具の種類と使い方、木の性質(15分)
・色々な木の香り体験(10分)
◆実技体験【60分~90分】
・ヤリガンナの実演(鉋の歴史)
・鉋の使い方と実演:荒・長台・仕上げ(二枚鉋・一枚鉋)
・日本と海外の鉋の違い
・大工道具の種類と使い方実演・体験
・色々な木の香り体験
◆工作体験【90分~】
・ひのきのおはし(300円)、えんぴつ立て(600円) など

日常で、大工道具を扱う機会が少なくなった現在、子どもたちにとって、鑿((のみ)や、鉋(かんな)などは珍しい道具といえるのではないでしょうか。学校の図画工作の授業において、鋸(のこぎり)や金槌(かなづち)、釘に子どもたちは大変興味を示します。自分で釘を打ったり、木を切ったりすることに大いに喜びを感じているようです。ここでは、木工の実技体験も可能で、専門の方から丁寧な指導を受けることもできます。先生方も、のこぎり等の指導において、研修の機会をご相談されるのも良いと思います。大工道具館では、夏期・冬期の休暇中など希望の時期に、木工道具の使い方や手入れ方法を中心とした教職員向けの研修を受け付けているとのことです。(2ヵ月前までに電話にて連絡)

【貸出教材・出張授業】

小学5年生の国語の学習で、「千年の釘にいどむ」(内藤誠吾 著)という教材(光村出版)が昨年度までありました。小学校の先生の中には、ご存じの方や実際に子どもたちと学習した経験がある方も多いのではないでしょうか。

これは、薬師寺再建に用いる釘を作った鍛冶職人・白鷹幸伯(しらたかゆきのり)氏を取り上げた作品です。白鷹氏は、宮大工の棟梁である西岡常一氏と出会い、薬師寺西塔再建のための和釘制作を求められます。和釘の特性、千年もつ釘を作ろうとした白鷹氏の想いが生き生きと描かれています。

この授業に対応して、竹中大工道具館では出張授業を行っています。学校の教員と専門性のある拠点が連携した素晴らしい取組だと思います。その様子が分かる文面をご紹介します。

文化庁広報誌ぶんかる 掲載
(2014年9月25日号より一部抜粋して引用)

このように、竹中大工道具館では、DVD「和釘を作る」(和釘の特徴やつくり方とともに、仕事に熱意と誇りを持って打ち込む白鷹親子の姿を紹介したもの)や、「千年の釘」(白鷹幸伯氏製作の和釘)を所蔵しており、学校の要望に応じて貸し出しや出張授業を行っているということです。(2ヵ月前までに電話にて連絡)

「千年の釘にいどむ」は、今回の改定による新しい教科書には、残念ながら載っていませんが、総合的な学習の時間や、社会科などでも取り上げることは可能だと思います。

薬師寺は,1300年前に建立されましたが、戦国時代に東塔を除くすべての建物が焼失しました。そして、1970年に400年来の悲願であった大規模な再建計画がスタートします。白鷹氏は、これにかかる和釘の製作にとりかかるにあたり、古代の釘を調べてその素晴らしさに驚かされます。千年以上も前の職人が、砂鉄を原料にして極めて高い純度で、さびにくく、しかも打ち込まれる木の性質にも精通して、みごとに適した形とかたさの釘に仕上げることができていたというのですから。そして自身も、いろいろな鉄を集めて、叩いてみたり曲げてみたり試行錯誤を繰り返し、約2万本もの和釘を鍛造します。白鷹氏の言葉に「千年先のことはわからんが、千年先に鍛冶屋がいたら、千年前の鍛冶屋もいい仕事をしたな、と思ってもらいたい。下手くそと笑われるくらい職人にとって辛いことはありません」とありますが、その鍛えられた和釘には「願奉 萬民豊樂(ばんみんぶらく) 荘厳國土(しょうごんこくど)」と刻印されているそうです。これは、聖武天皇が東大寺を建立した際の詔の一説で、千年先にも木造建築や和釘、職人たちの技術を伝承したいという、鍛冶師としての白鷹氏の想いが深く刻み込まれているのです。
こういった願いが実現するためには、社会の仕組みや環境がしっかり整っていることが前提です。持続可能な社会づくりを願い行動できる人材の育成に向けた、先生方の日々の取組がその一役を担っていると言えます。

今回、企業博物館という新たな拠点の取材を通して、単なる博物館展示に終わらない、未来への提言に気づくことができました。学校の先生方にも、地域社会に大いに目を向けて、授業に活用できる素晴らしい宝物を探っていただけたらと思います。

(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)

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