近畿ESDセンターは、開設4年目となりました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和2年度は4つの拠点に対して、コロナ禍の状況に配慮した上で対面またはリモート等、拠点に可能な形で取材を実施することができました。
7月21日に京都市伏見区にある
南部クリーンセンター環境学習施設「さすてな京都」を訪問し、京都市環境政策局の北垣さんと熊澤さん、さすてな京都の運営団体である(株)トータルメディア開発研究所の柳さんと公益財団法人京都市環境保全活動推進協会の谷内口さん、環境学習プログラム専任の中西さんにお話をうかがいました。
レポートその1では、最先端の技術を駆使して創られた「さすてな京都」の施設内の様子と、その主な特長についてお伝えします。その2では、「さすてな京都」の学習プログラムや地域の小学校と連携して展開されている環境学習実践について、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
<さすてな京都の名前とロゴマーク>
南部クリーンセンター環境学習施設の愛称である「さすてな京都」は、市民からの一般公募によるアイデアで、最先端の「さ」、素晴らしいの「す」、展望台の「て」、南部クリーンセンター「な」の頭文字と、「持続可能な」という意味の「サステナブル」という意味が込められているそうです。また、文字のデザインには、清らかに生きることの象徴としてハスがあしらわれています。これは、かつてその辺り一帯が巨椋池や横大路沼だったときには、たくさんのハスが泥から茎をのばしてきれいな花を咲かせていたからだそうです。
クリーンセンターはゴミ処理を目的とした施設で、「どんなしくみかよくわからない。危険そう。」などといったイメージがあるかもしれません。しかし、「さすてな京都」は、クリーンセンターに併設された環境学習施設の特長をいかして、焼却炉やごみ発電、バイオガス化施設などの迫力満点の大規模施設を間近に見学し、それらを生きた教材として楽しみながら最先端の環境技術を学ぶことができます。
今年度は小学校の新指導要領の全面実施とも重なり、本来であれば4月から京都市内約100校の小学4年生の見学を想定していたそうですが、残念ながら現在は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から団体見学の見通しが立っておらず、小学校の校外学習として受け入れるのは来年度からの見込みだということです。
<新学習指導要領との関連性>
新指導要領では、小学校社会科第4学年において、
- 廃棄物を処理する事業は,衛生的な処理や資源の有効利用ができるよう進められていることや,生活環境の維持と向上に役立っていることを理解すること。
- 見学・調査したり地図などの資料で調べたりして,まとめること。
- 処理の仕組みや再利用,県内外の人々の協力などに着目して,廃棄物の処理のための事業の様子を捉え,その事業が果たす役割を考え,表現すること。
と記されています。
さすてな京都における見学ならびに学習は、これらを学ぶ教材として最適であると言えるでしょう。
子どもたちは、ごみの減量化の呼びかけや食費ロスに関わるポスターや映像などを日常生活において目にすることが多いと思います。また、海洋プラスチックごみの問題に対しては、昨年のG20大阪サミットでも大きく取り上げられました。こういった社会で起きている問題や出来事に対して、自分自身も取り組まなければならないという意思や、地球の環境に対して自分が責任を持つという意識を子どもたちの心に芽生えさせるにはどうしたらよいか、先生方も悩まれているのではないでしょうか。さすてな京都の見学を通して、そういった課題意識を持つことに役立てていただけると思います。
<さすてな京都の展示>
まず、展示室からご紹介します。1階エントランスを入ると一番に目につくのが「デジタルインフォメ―ションウォール」です。大型画面のたくさんの写真が数秒ごとに入れ替わり、京都の自然や歴史、文化遺産などの画像も組み込まれています。それはタッチパネルになっており、自分の関心のあるところに触れると、次々と映像が映し出され新しい発見にたどり着きます。クリーンセンター見学に向けてワクワク感が生まれますね。
次に、「わたしたちの環境」と題して、京都市周辺の自然や生物、ごみ処理施設や自然エネルギーに関わる施設などが描かれています。親しみやすい絵地図に描かれているので、さすてな京都や自分たちの学校の位置なども見つけやすいと思います。モニターで生き物の解説や施設の説明も詳しく分かります。
続いて、「京都の環境レポート」では、京都の環境を数字で表して関心を高めています。例えば、京都市の年間のごみの総量や、一人一日当たりにすると何g出していることになるとか、食品ロスの量など、大きな数字パネルで表しています。興味深いのは、ごみの最終処分場「エコランド音羽の森」(ごみのダムのようなもの)の埋め立て可能期限が当初は15年だったのが、ごみの減量化が進んだことにより現在では50年の使用期間が見込めているということで50という数字で表されています。
見学時には、担当スタッフの中西さんが子どもたちに向けてクイズ形式で案内されると聞きました。子どもたちの当事者意識を高めるための工夫を上手く取り入れられています。
その他、京都市航空写真や京都に根付いているエコな暮らしの紹介やSDGsコーナーなどがあり、環境学習の必要性に導いてくれます。
2階にも展示室があり、発電体験コーナーや環境クイズコーナー、暮らしの無駄探しゲームコーナーなど、実際に体験することで楽しみながら学習できる仕組みになっています。
さて、いよいよ京都市南部クリーンセンター第二工場の見学ですが、タブレット持参での見学を試みています。
焼却炉付近では、タブレット画面に炎が映し出され、とても臨場感がありました。
見学時にもプラットホームではトラックがごみを投入し、ごみクレーンがごみゴミピット内のごみを燃えやすいようにかき混ぜて焼却炉に投入していました。クレーンについては、実物の大きさを視覚的に体感出来たり、ごみクレーン操作のゲームが体験出来たりと、子どもたちの五感に訴える工夫がなされていました。
≪ごみクレーンの操作をゲームで体験することができる 社員提供:さすてな京都≫
工場内は約600メートルの見学ルートになっていますが、環境にやさしい施設として建物の内装に地域産木材が活用されており、目にもやさしく明るい雰囲気です。また、長い廊下の通路脇にもパネル展示で気付きや学びを促すような仕組みになっています。
煙突棟のエレベーターを上ると、さすてな展望台に着きます。眺めはすばらしく、横大路地域はもちろん、桂川・宇治川や遠くエコランド音羽の森(最終処分場)も見え、タブレットをかざすと、横大路沼、巨椋池などの名前と共に昔の景色が浮き上がってきます。
この展望台は、現在の眺望はもとより昔の歴史的な戦いの場を想像しながら見渡すことができるという訳です。
最後に、このクリーンセンターの誇る最新技術として、3つ紹介します。
<蒸気タービン発電機> これは、ごみの焼却により発生した熱から出た高温・高圧の蒸気を利用して発電を行うもので、約14,000kWもの電力を発電しています。タブレットで、機械内が覗けます。
<バイオガス化施設>生ごみを微生物の力を借りて発酵させてバイオガスを作り、それを燃料として発電するという仕組みです。現在の発電量は1000kWほどですが、その仕組みから、再生可能エネルギーを作りだすことの素晴らしさに驚かされます。
<選別資源化施設>大型ごみを破砕して資源になるアルミニウムや鉄を回収するものです。回収したものは資源としてリサイクルし、無駄なものを極力少なくして再利用することを徹底しています。
レポートその2では、さすてな京都が地域の小学校と連携して展開されている具体的な実践を中心に紹介します。
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)