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2020.01.22 センターお知らせ 

「阪神・淡路大震災の経験と教訓を次世代に生かすために」阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター その1

 近畿ESDセンター開設3年目となりました。令和元年度も学校教員のESD推進を応援する拠点を取材しています。8月22日に神戸市にある、阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターを訪問し、事業部の矢野さんと藤村さんにお話をうかがいました。センターは、兵庫県が国の支援を得て2002年4月に設置し、公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構が運営する施設です。矢野さんと藤村さんは、お二人も県の職員として運営に携わっておられます。
 
 今から25年前の1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災では、6,434人もの尊い命が犠牲になりました。その経験と教訓を後世に伝えるとともに、減災社会に向けて広く国内外に発信していくことを目的としてセンターは開設されました。

人と防災未来センター外観  ≪人と防災未来センター提供≫
 
 近年、科学技術の進歩によって快適な住空間が提供される一方で、毎年のように自然災害が発生し、多くの人々の生活が脅かされているのも事実です。世代を問わず全ての人の防災・減災に向けた正しい知識と行動の必要性が問われています。そのような状況の中で、人と防災未来センターの果たす役割にはとても重要な意義があると言えます。
 
まず、このセンターが備える機能について教えていただきました。
1.博物館機能:展示、資料収集、保存といったもの
2.研究機能:実践的な防災研究(災害対応の現地調査支援)と若手防災専門家の育成
3.研修機能:災害対策専門職員の育成
 このように、大きく分けて3つの特色があるそうです。
 
レポートその1では、博物館機能としての館内展示を中心に、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
 
【阪神・淡路大震災を未来に語り継ぐために】
人と防災未来センターには、年間で約50万人もの人が見学に訪れるそうです。その内半数は小・中学生で、県外からは修学旅行、県内からは校外学習としての利用が多いそうです。阪神・淡路大震災の記録を伝えることで、防災、減災について、子どもたち一人ひとりにしっかりと考えてもらいたいとおっしゃっていました。
 
センターは、西館5階、東館3階からなっています。フロアガイドはこちら
では、見学コース順に沿ってセンター内の展示を紹介します。
 
 まず西館4階は、震災経験のない子どもたちでも、阪神・淡路大震災の地震がいかにすさまじい破壊力だったのかを目の当たりにすることができる「震災追体験フロア」です。
1.17シアターでは、震度7という強いゆれを実際の映像で再現しています。ビルや家が、道路や車が、駅や線路や電車が、まるで映画の1シーンのように大音響と共に壊れ、吹き飛ぶ様子が映し出されます。追い打ちをかけるように各所で火災も発生し、一瞬にして多くの命が奪われました。人々は住む家を失い、電気、ガス、水道といった生活の基盤となるライフラインも全てストップしてしまい、何万人もの人が公園や学校などでの避難所生活を余儀なくされてしまいます。
 ジオラマで再現されたまち並みからは、震災直後の絶望感が伝わって来ます。また、大震災ホールで上映される「このまちと生きる」には、震災のために何もかも奪われたまちの人々が、多くの課題を乗り越えて少しずつ復興に向けて歩み始める様子がドラマで紹介されています。恐ろしい災害により壊滅状態になりながらも、協力し合い励ましあって日々の生活を取り戻そうとする姿には、未来に向かうたくましさを感じます。

西4階 震災直後のまち ≪人と防災未来センター 提供≫
 
 次に3階は、「震災の記憶フロア」として、市民から寄せられた、震災に関係ある800点もの品々が、提供者の体験談と共に展示されています。また、震災を語り継ぐコーナーでは、語り部の方が自らの体験を語ってくださいます。忘れたい悲しみではあるでしょうが、それでも伝えることに使命を感じておられるのでしょう。この語り部ボランティアには40人の方が登録されているそうです。

西3階 震災を語り継ぐコーナー ≪人と防災未来センター 提供≫
 
 人と防災未来センターの展示物に触れ、語り部からの実体験を聞くことで、当時の状況に思いをめぐらせることができ、被災した人々の想いや困難に立ち向かう姿勢、被災者の支えとなった多くのボランティアの存在などを知ることができます。
 
 センターの見学を通して、四半世紀前の阪神・淡路大震災で起きた被害の状況を知り、改めて自然災害の恐ろしさを体感するとともに、災害を乗り越えて復興に向かう人々の状況を把握することができます。つまり、このセンターの展示は、25年前の過去の出来事を歴史として子どもたちに伝えているだけではなく、これから先、いつ何時、このような地震がまた起きるかもしれないと、自分事としてしっかりと受け止め、どう行動すればよいかを考えるきっかけを与えてくれます。このことは、防災・減災の大切さを学ぶことにつながります。
 
【被災の体験をもとに未来の防災を考えるために】
 続いて、2階は防災・減災体験フロアになっています。
 その中の災害情報ステーションには、近年、世界で起こっている自然災害を学習することができるコーナーがあります。実際の衝撃的な映像も流れ、日本だけでなく世界の災害に対する知識を得ることができます。また、防災・減災ワークショップのコーナーでは、実験やゲームなどを通して、防災・減災に関する実践的な知識を学ぶことができます。実際の災害時に備えるための、減災に役立つグッズも紹介されています。自分自身が気をつけること、家族で確認しあっておくこと、地域で協力できることなど様々な視点があり、防災訓練などにも真剣に取り組む姿勢を促すことができると思います。
 
 また、東館には東日本大震災の被災地のドキュメンタリー映像「大津波―3.11未来への記憶―」が3D 映像で上映される「こころのシアター」をはじめとして、地震による津波の恐怖や、南海トラフ・首都直下型地震を想定したコーナーなど、主に風水害と減災について学ぶことができます。津波避難体験コーナーでは、実際に歩行装置を付けて津波の水圧がかかる中で歩行する疑似体験をさせてもらいましたが、足首あたりに押し寄せてくるだけでも、重くて前に進みにくいと感じました。津波の発生の危険を感じたら、いち早く高台に避難することの必要性を実感しました。

東3階 風水害の脅威 ≪人と防災未来センター 提供≫
 
 今回の訪問で、人と防災未来センターは、子どもたちにとって災害と向き合う貴重な動機付けを促す場であると、改めて思いました。ここでの学びを生かして学校での学習では、友だちと意見や感想を出し合い、自分たちの地域での過去の災害を調べたり、自分たちにできることを考えたり、防災・減災についても深く学ぶことにつなげられると思います。
 
その2では、人と防災未来センターの持つ、研究機能と研修機能を中心にご紹介したいと思います。
 
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)

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