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2019.02.25 センターお知らせ 

「~世界遺産のお寺で、気づく、学ぶ、考える~ 東大寺寺子屋」華厳宗大本山 東大寺 その2

近畿ESDセンターでは、昨年度に続き、平成30年度も学校教員のESD推進を応援する拠点を取材しています。11月26日に華厳宗大本山東大寺を訪問し、華厳宗教学部長・東大寺教学執事の上司永照師と、寺務所執事室の鈴木公成氏のお2人にお話をうかがいました。
 
「~世界遺産のお寺で、気づく、学ぶ、考える~東大寺寺子屋」その1はこちら
 
「その1」では、華厳宗大本山東大寺が実施する「東大寺寺子屋」の子どもたちの活動プログラムを中心にご紹介しました。「その2」では、「東大寺寺子屋」を運営する側からの視点を中心に、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
 
 
◆グループ活動の意義
「東大寺寺子屋」では、小学校5年生~中学3年生の20人を4つのグループに分けて、5人ずつの異年齢集団で2泊3日の寺子屋体験をしていきます。つまり、様々な活動において、年齢や性別の違う仲間とのやりとりが生まれます。
中学生はグループの意見をまとめたり、下級生を助けたり励ましたりと、リーダー役を担う機会が与えられ、自分の言動に責任と自信を持つことができます。小学生にとっては、中学生がよいお手本となります。こういった異年齢集団での生活を通して、「進んで参加する態度」、「人・もの・こととのつながりや関わりを大切にし、それらを総合的に考える力」、「他者の立場に立ち共感・協力してものごとを進めようとする態度」など、問題解決に必要な能力や態度を培うことができるでしょう。
 

写真提供:華厳宗大本山東大寺 (グループに分かれて境内をフィールドワーク)
 
一日の活動を終えた夜にはグループミーティングを行い、それぞれが書いた一日の「気づき」をグループ内で共有します。ここでは、同じ体験をしても生活経験や年齢によって、気づきの視点が違うことが分かったり、自分に新たな視点ができたりすることでしょう。また、レポートその1でご紹介したように、二日目の夜のグループミーティングで、「グループの一文字」 を決める話し合いを持つことによって、「自分の考えを、理由をつけてしっかり伝えること」「相手の意見を尊重し相手の気持ちも考えながら、集団の意見としてまとめていくこと」といったコミュニケーションの力を高めることができます。充分な話し合いによるグループの一文字は、体験を共にしたからこそ、意味を持つのだと思います。
 
 
◆東大寺寺子屋を充実させる大学との連携
東大寺寺子屋では、若手の僧侶のほか、奈良教育大学が事務局を勤める近畿ESDコンソーシアムとの連携によって奈良教育大学の学生がグループリーダーや運営スタッフとして、子どもたちのサポートに入っています。スタッフで現地研修会を複数回実施して、テーマや趣旨に沿って活動をスムーズに運営するために検討事項を話し合ったり、前もって活動を体験したりする機会を持ちます。子どもたちにとって有意義な3日間になるよう、入念な下準備と綿密な計画が立てられていることが東大寺寺子屋の一層の充実につながっていることが、お話しを聞いて分かりました。
例えば蚊帳を吊るなど、大学生にとっても初めてのことなのですから、試行が必要です。また、参加予定者から事前にアンケートをとって活動を組み立てる際の参考にしたり、世界遺産に学ぶフィールドワークの持ち方や活動の詳細を確認し、荒天時や緊急の事態などの救急対応の仕方も確認したりと、寺子屋を成功に導くために事前準備をしているということです。
 
東大寺寺子屋をこれから先もずっと続けられるよう、持続可能な行事にしていきたいので、若い僧侶や大学生もお互いに学んでいくことにも意味があると仰っていました。
 

写真提供:華厳宗大本山東大寺 (鹿も見かけられる二月堂登廊(のぼりろう)の石段)
 
 
◆関わった若手の僧侶や大学生の学び
ボランティアスタッフである奈良教育大学の学生は、教育者としての志を持って大学で勉強しています。大学生の子どもたちとのかかわり方に触れることで、若手の僧侶にとって様々な気づきや学びが生まれ、若手の僧侶の育成にもなっているそうです。また、大学生にとっては、世界遺産の中での非日常の体験ができるので、今後教職に就いたときにも、貴重な経験として活かされるのではないでしょうか。
 
スタッフとして参加した大学生の感想からも、貴重な学びの機会となったことが分かります。
「東大寺僧侶との協同による宿泊体験を通して、観光では決して知りえない気づきと学びを得ることができました。毎朝お勤めする二月堂内では厳粛な空気が漂い、僧侶の方々の真剣さと仏道への熱意を感じました。また一方で、三日間生活を共にしたことで、遠い存在だと思っていた僧侶の方を身近に感じました。
この貴重な体験を通して、日本の伝統の中で守り継がれてきた仏教というものに関して、参加したものそれぞれが何かをつかめたような気がしました。千年を超え守り続けてこられた奈良を、みんなの力で保ち続けるにはどうすればよいか、深く考えるきっかけとなりました。」
東大寺寺子屋の体験は、物質文明が発展した豊かな現代の暮らしに慣れた私たちが、本当に大事なものは何かを、立ち止まって考える機会を与えてくれると言えるでしょう。
 

写真提供:華厳宗大本山東大寺 (夜の大仏殿での記念写真)
 
 
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)

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