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2023.04.04 ESDニュース・イベント 

「ススキの大自然の中で豊かな心を養い、自ら学ぶ意欲を育てる」 国立曽爾青少年自然の家 その1

近畿ESDセンターは、2017年7月の開設以来、今年で5周年を迎えました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和4年度は2つの拠点に対して取材を実施しました。

 

7月5日(火)には、奈良県宇陀郡曽爾村にある(独立行政法人国立青少年教育振興機構)国立曽爾青少年自然の家(以後、主に「自然の家」という)を訪問し、次長の角田さん、企画指導専門職の高瀨さんに活動や取組についてお話を伺いました。
<会議室での取材風景:近畿地方環境事務所、近畿ESDセンター企画運営委員も同行して和やかな対談となりました。>

 

レポートその1では自然の家の設立背景や施設の様子、目指す姿について。その2では、自然の家が取り組む事業プログラムを基に、学校での体験学習や授業への活用を中心に、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
<施設前の風景 写真提供:国立曽爾青少年自然の家>

 

【曽爾の地域資源を背景に開設された 曽爾青少年自然の家】
自然の家のような国立の青少年教育施設は、文部科学省の機関として開設されました。後に「国立少年自然の家(全国14か所・曽爾も含む)」と「国立青年の家(同13か所)」とに分かれて法人化され、現在は、国立オリンピック記念青少年自然センターを加えて統合し、独立行政法人国立青少年教育振興機構として一体になって運営されています。https://www.niye.go.jp/about/history.html
北海道から沖縄まで全国28か所において、海・山・川等の自然あふれる教育施設が、それぞれの立地条件を活かした特色のある活動を展開しています。https://www.niye.go.jp/facilities/facilities.html

 

今回取材した国立曽爾青少年自然の家では、ススキの波がゆれる広々とした草原や、これを抱く亀山、眼前にひらける曽爾三山の雄大な展望などを舞台に、青少年がいきいきと活動し、寝食を共にすることで、自然に親しみ、心身を鍛え、望ましい社会的態度を身につけることを目的として設置されたそうです。また、3年ほど前から、森林のエリアを持ち味に、森林環境教育を軸にした事業方針で運営を進めておられます。
< 秋のススキの頃は、曽爾高原一帯が見事な金色に染まります。>
<山側から望む自然の家の遠景 提供:国立曽爾青少年自然の家>

<1000m級の山々が望める案内標識。生息する野鳥や草花の案内も>

 

施設が建てられたのは昭和55年ですから、既に42~3年前になります。400名の子ども達が泊まれる大型の青少年教育施設で、奈良県、三重県名張、伊賀、大阪、京都府南部の学校の林間学校や年度初めのオリエンテーション等に活用されています。年間12万人の利用があったものが、コロナの影響でここ2年間は宿泊利用が減りましたが、今年度は5~6万人に戻る見込みだそうです。
集団宿泊行事は、学校教育における各教科で身につけた「資質・能力」を総合的に活用して実践できるという教育効果が全国学力・学習状況調査(文部科学省・国立教育政策研究所)からも挙げられており、曽爾でも、このような体験が重要と考えています。そこで、集団宿泊活動と、家庭科・理科・体育・国語・道徳などとの関連を図り、各教科の年間計画に位置付けて組み込む提案をしているそうです。「ここで体験型の授業をしませんか。」と、自然体験プログラムを授業の教科に読み替えたり、事前事後の学校での授業と一体となった計画作成を勧めたりすることで、集団宿泊活動の教育的効果をより高める取り組みもされていると伺いました。

 

【地域の魅力から地域課題・地球規模の課題に目を向けてESDの学びに】
ススキの草原利用として、昔は太良路地域の家の萱拭き屋根の吹替えや、伊勢神宮へも出荷していたけれど、その需要が減ってしまった。今は刈り取らないのでススキが固くなって育たなくなっている。つまり、循環ができなくなっている。持続可能な曽爾高原のススキの未来をどのようにつくっていくか地元の人と一緒に考えている、とお話を伺いました。
また、地球温暖化の影響は、ここ曽爾においても現れており、冬に雪のプログラムとして開催していたそり滑りや歩くスキーなども、最近は年に2~3回しか積雪がなく、ほとんど実施できなくなっているそうです。また、雪解け水が春先の施設の水資源となっていたのが、近年は降雪量が少なく水不足の傾向にあるそうです。
これら、地域課題を切り口としながら、森林環境教育から他の教科に広げていき、ここでの体験から地球環境問題を考えるきっかけとなるプログラムを考えていきたいとも仰っていました。まさに、地域資源を活用して、地域の課題解決に迫るESDの授業が展開できると思います。

 

【大自然の立地条件を有効に活用した開放的で学べる施設】
取材の後で施設内を見学させていただきました。400人が収容可という広い敷地内には、充実した施設や設備が整っています。

 

まず、宿泊設備から。きのこ棟・はな棟・むし棟など、8つの宿泊棟(各6~8室)があります。(さかな棟はバリヤフリーになっています。)
     <宿泊棟につながる入口:自然の家ホームページより>

 

<宿泊棟 はな棟の入口 8つある部屋には、それぞれ花の名前がついています。>

 

<清潔な宿泊棟の部屋。集団宿泊行事の大切な思い出に残ります。>

 

研修室も充実しており、びょうぶ・かぶと・くろそといった山の名前がそれぞれについています。
また、プレイホールと名付けられた体育館は、雨の日にはキャンドルサービスもここで行い、バレーボールやバトミントンのコートにもなるそうで、実際、その広さに驚きました。

<さわやかな自然の風が吹き抜ける広いプレイホール>

 

<玄関先に飾ってある利用校・園のお礼のメッセージやクラフト作品>

 

<自然の家を拠点にして周遊コースを紹介した地形図>

 

<天井が高く開放的な眺めの食堂>
屋外施設としては、つどいの広場や野外炊飯の設備があり、入所式・退所式・キャンプファイアーをはじめとしたさまざまな活動をする施設や広場が、緑の自然の中に設置されています。
<取材当日は暑い時期でしたが、涼しい風が吹き緑の山並を望める つどいの広場>

 

< 野外炊飯場:自然の家ホームページより>

 

< 野外炊飯場:自然の家ホームページより>

 

< 野外炊飯場:自然の家ホームページより>

 

まだまだ紹介しきれていませんが、施設紹介ページを参考にしてください。https://soni.niye.go.jp/zenkan_annai

 

自然の家では、豊かな自然を丸ごと体験できるプログラムを毎年数多く実施するだけでなく、参加者の多様性にも配慮して、対象を絞って募集するものもあります。

 

特色あるプログラムについては、その2でお伝えしていきます。
その2に続く。)
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)
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