近畿ESDセンターは、開設5年目となりました。近畿ESDセンターでは開設当初から、学校教員のESD推進を応援する拠点の取材に取り組んでいます。令和3年度は2つの拠点に対して取材を実施することができました。
レポートその1では、京都市動物園の歴史、動物園の役割や目指す姿について、その2では、京都市動物園が取り組むESDやSDGsについて学校での学習や授業への活かし方を中心に、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメント共にご案内します。
【京都市動物園の歴史】
京都市動物園は、1903年(明治36年)に開園しました。日本では上野動物園の次に古い動物園ということで、令和5年には、開園120周年を迎えます。その所在地は、平安時代後期の1077年に白河天皇により建立された法勝寺の跡地にあたるとの事です。1900年に大正天皇(当時皇太子)のご成婚を祝して(またはご成婚の記念として)動物園開設の運びとなりました。その総費用のうち約45%が市民の寄付だったそうですから、京都の人々の動物園開園に対する期待や喜びがどれほどのものだったのか想像に難くありません。
<動物園の中央付近に建てられている法勝寺九重塔跡の碑>
【「近くて楽しい動物園」から、「いのちかがやく動物園」へ】
リニューアルに伴う基本的概念は、「近くて楽しい動物園」です。
「近い」とは、京都市の中心部からすぐ近くの便利な場所にあることと、動物園の中での人と動物の距離を近づけることを目的としています。京都市動物園の敷地の狭さを上手く活用して、動物本来の大きさや姿をより近くで体感でき、その迫力や匂い・息遣いまでも感じられるように工夫して造られたということです。そして、「楽しい」は、来園者にとっての楽しさだけでなく、動物たちにとっても「楽しい」ということを目指しているそうです。動物園を訪れる人を楽しませるために動物を利用するアミューズメントパークではなく、動物の一生の幸せにしっかりと動物園が責任を持つという姿勢です。これには、動物福祉の考えが込められています。特に近年、この動物福祉の考え方が世界中で高まり、動物園の様々な役割の基盤となっていると田中さんは仰っていました。動物福祉向上に努めていくうえで、京都市動物園では、飼育担当者・獣医師・研究者といった異なる視点を持った職員が協働して活動しているということが強みとなります。
<ぐっすり昼寝中のジャガー「アサヒ」 大阪市天王寺動物園からやって来た。元気で食いしん坊とのこと。>
<ヨーロッパオオヤマネコ「ロキ」パリ動物園から。 来園当時は隠れていたということですが、現在は園の取組成果もあり、リラックスしてしっかりとカメラ目線で迎えてくれました。>
<近寄ってきてくれたメスのミニブタ「ナッキー」 15歳の長寿>
<インドネシアの固有種 オオバタン「オージロー」こちらは54歳の長寿!>
<水中からプールの淵にあごをのせて、まったり休むカバ「ツグミ」>
【いのちかがやく京都市動物園構想】
京都市動物園では、令和2年2月に「いのちかがやく京都市動物園構想2020」を策定しました。ここでは、「人間もまた地球に生きる動物の一員であることを踏まえ、京都市動物園は、ヒトを含む全ての動物のいのちと暮らしに敬意をもって向き合い、市民とともに動物園文化の成長と発展に寄与すること」を理念として掲げています。
また、動物の福祉に配慮し、いのちを輝かせる飼育・展示を行う。野生動物の行動や生態、動物福祉等の研究を推進し、生物多様性の保全に寄与する。など、6つの行動指針を定めており、飼育動物の暮らしをより豊かにする取組を充実させるため、「どうぶつしあわせプロジェクト」等にも取り組んでいます。(「どうぶつしあわせプロジェクト」については、レポートその2で紹介します。)
【きょうと☆いのちかがやく博物館】
2015年に、京都市動物園・京都府立植物園・京都水族館の3施設で協定を締結し、翌2016年には京都市青少年科学センターが参画して、生き物でつながる京都市内の4つの博物館が協力してかけがえのない自然環境を次世代へ継承すべく、体験・啓発を目的とした連携協定が締結されました。そして、一年を通して、いのちの多様性や様々な生き物が暮らせる自然環境の大切さを伝えるワークショップなど、様々な交流イベントを展開しています。