近畿ESDセンターでは、昨年に引き続き、平成30年度も学校教員のESD推進を応援する拠点を取材しています。
9月10日に湖北野鳥センター/琵琶湖水鳥・湿地センターを訪問し、植田さんと池田さんにお話をうかがいました。
湖北野鳥センターは、琵琶湖に生息する水鳥たちの生態について学ぶとともに、自然環境保全の啓発を目的として1988年11月に設立され、今年で30周年を迎えます。琵琶湖北部の豊かな自然と人の暮らしを背景として、長年に亘って野鳥の研究、自然環境保全、環境教育に貢献してきたセンターの事業を、お二人の熱い想いと共に聞かせていただきました。
センターでは、日々の天候の記録と共に、野鳥が何羽、何種類見られたか全て記録されており、毎日ホームページ(野鳥センター鳥情報)を更新されています。
例えば、11月中旬に飛来が確認されたオオワシに関する記事では「冷たい雨風の中、魚を捕まえている姿が見られた。」とあれば、思わず応援したくなり、「穏やかな天気の一日に、何時間も枯れ木に止まっていた。」とあると、ゆったりくつろいだ気分になるなど、四季の移り変わりを感じながら、鳥たちの生活に思いをはせることができます。
以下、児童・生徒向けの主要なプログラムや事業について、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
①定例観察会
毎月1回のペースで行われている「季節の自然をその時々に楽しむ」観察会では、毎月、子どもたちの好奇心を誘うテーマで開催されています。
4月は、春の生き物観察、6月は外来魚釣り大会、8月は昆虫採集、11月はバードウォッチングといったように、身近な自然に親しむことで、自然の持つ雄大さや神秘を感じることができ、生き物の多様性の素晴らしさに気づく体験ができるようになっています。
例えば、3月に開催された「湖岸のヤナギ林探検」においては、「探検」というタイトルの工夫によって子どもたちは参加したくなります。ヤナギの林を歩くと、ここには、ほとんどヤナギしかありません。なぜなら、ヤナギの葉っぱが茂って地面に太陽光があたらず、他の植物が育たなくなっているからです。昔はヤナギを日常生活にも活用していたので定期的に間伐されている状態だったそうですが、今では暮らしのなかでヤナギを使うことも少なくなってきました。センターでは、ヤナギ林を毎年手入れし、そのことによってヨシが生え、多様な植生を生みだすとともに、野鳥の暮らしを支えているという話をセンターの職員さんから聞くことができます。現地を歩きながら私たちの暮らしと自然との関係性に触れることができ、人間の生活が自然に与える影響の大きさに気づくことでしょう。
写真提供:湖北野鳥センター/琵琶湖水鳥・湿地センター
②とりのおはなしのかい
毎月第四土曜日に野鳥センターで、湖北図書館協力のもと、季節の自然を題材にした絵本の読み聞かせや工作などが開催されています。例えば、10月は「カモ もみじ ハロウィン」、11月は「ハクチョウ こおり くま」、12月「オオワシ ふゆ クリスマス」、1月は「ガン ゆき せつぶん」をテーマにしています。そして、このおはなしに登場する、季節を代表する野鳥を湖北で見ることができるというのですから、季節の行事や事象を背景に、子どもたちは鳥と対話する感覚でお話に引き込まれますね。
③探鳥会
おはなしの会にも登場する鳥たちを、実際に観察できるのが、日本野鳥の会滋賀支部と共催で開かれる毎月の探鳥会です。探鳥会には、案内役のリーダーと、野鳥に詳しいベテランの方も参加されますので、気軽に尋ねることができ、初心者でも安心して参加できる観察会だそうです。探鳥会で、解説していただきながら実際に鳥の姿を見たり、声を聞いて鳥の種類を見分けたりなどすることで、自然の中で生きている鳥に親しみを覚え、野鳥たちの暮らしを守りたいという気持ちにつながるでしょう。
このように、野鳥センターでは、野鳥の観察はもちろん、自然と共生した暮らしにもテーマを置いて発信しています。
子どもたちに対して「自然環境に関心を持った人材を育てていきたい。たとえば、昨今話題になっている希少な絶滅危惧種を違法に捕獲した事件が報道された折には、そのような行為に強い怒りを覚えるような人なってほしい。」「野鳥がいて当たり前ではなく、その生息環境の保全に力を注ぐ人の存在によって、野鳥の暮らしが守られているのだということをもっと広く知ってもらいたい。」といった想いをおうかがいしました。
レポートその2では、ESDにどのように学びをつなげていくことができるかを探りたいと思います。
「その2」に続く
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)