近畿ESDセンターでは、昨年度に続き、平成30年度も学校教員のESD推進を応援する拠点を取材しています。
9月19日に天王寺動物園を訪問し、教育普及担当の高坂さんと市川さんにお話をうかがいました。
動物園というと、低学年の遠足で訪れる場所というイメージがあります。
実際、取材を行った日も複数の学校が遠足に訪れており、園内を回ったりお弁当を広げたりと、楽しそうに活動している低学年の児童を見かけました。
しかし、天王寺動物園は、「楽しい遠足の場」だけではなく、生物多様性保全や環境保全の理解や気づきを促す場として、更に、平和教育・国際理解教育の教材の提供の場としても、ESDにつながる宝庫だということが取材を通して確認できました。
以下、天王寺動物園の教育的側面と、児童・生徒向けの主要なプログラムについて、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
天王寺動物園では、平成30年8月に「天王寺動物園教育ポリシー」を策定されました。
以前からも充実したプログラムはありましたが、今後、ESDの考え方に基づき、教育普及活動の更なる展開を通じて人々の行動変革を促し、
・自ら考え、野生動物や環境保全、生物多様性の保全につながる、行動ができるヒト
・あらゆる生き物の命を大切にするヒト
を育む場となることをめざす。
といった目標を定められています。
それでは、天王寺動物園で“ほんもの”に触れることによってどのような学びにつながるのか、遠足の際にも活用して見学を充実させることができるプログラムをご紹介します。
『新たな発見を生む、天王寺動物園 ディスカバー・プログラム』
講座案内
てんのうじどうぶつえんblog
①動物 ショート・ガイド
動物園舎の前で飼育係さんに、動物の特徴や餌などの説明を聞くことができます。いつも動物の世話をしている飼育員さんから、動物の癖や、性格、特技なども交えたお話を聞くことで、子どもたちは動物について、より詳しく理解することができます。動物に対して親近感が生まれることで、命を尊重する態度を養うことができると思います。
②ズー・スクール
動物園内にある教室で、動物園の職員さんにビデオ、スライドを交えて「動物のえさとウンチ」「絶滅の危機にある動物たち」「戦時中の動物園」など様々なテーマでお話を聞くことができ、生物多様性の喪失の危機や保全の大切さ等について理解を深めることができます。
例えば「戦時中の動物園」では、子どもたちの祖父母の年代も戦争を知らない時代となり、戦争体験者の話を聞くことが難しくなっている近年、戦時中の記録に基づき、当時の動物園の置かれた状況等を子どもたちに伝えることができるのは、開園100周年を超える天王寺動物園ならではのプログラムです。日本でもし今戦争が起きたら、天王寺動物園にいる動物もいなくなります。元気に走りまわっている動物たちがいなくなるのは、大変悲しいことです。そうならないためには、私たちはどうしたらよいのか、子どもの目線で考えさせる事ができます。
写真提供:天王寺動物園
③動物園ガイドウォーク
動物園の職員さんに、園内を児童と一緒に歩きながら、動物についての解説や動物園の見どころを伝えてもらうことができます。
写真提供:天王寺動物園
④動物園・職場紹介
動物園の職員さんの仕事内容や、動物園の概要などを説明してもらい、質問にも答えてもらえるものです。動物たちを飼育することの難しさや、動物との触れ合い等、飼育員さんの日常に触れることで動物園を違う視点から捉えることができます。
⑤動物園飼育体験講座(職場体験)
動物舎の清掃、餌作り、給餌等が体験できるもので、中学校・高校の職場体験カリキュラムとして受け入れてもらえます。
⑥動物園・出張スクール
大阪市内に限りますが、動物園の職員さんが出向いて「ズ―・スクール」のテーマの中からお話をしてもらうことができます。
何よりも、動物そのものの生態は大変興味深く、動物の親子にも命のつながりがあって確かな愛情で結ばれています。私たちが様々な生き物と共存しているこの地球について学ぶ際に、多様な動物と出会い、その生息環境における実態や課題を学ぶことによって、地球温暖化や、森林破壊などの地球規模の環境問題について考え、将来にわたって生物多様性の保全の必要性を追求する思考への足掛かりとなりえます。天王寺動物園を活用した学習は、子どもたちの興味や関心を高め、持続可能な社会に向けた学びへと展開していくことができるでしょう。
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)
「その2」に続く