平成29年度、近畿ESDセンターでは、学校教員のESD推進を応援する拠点を取材しています。
10月27日に和歌山自然博物館を訪問し、学芸課長の平嶋さんにお話を伺いました。
和歌山は、黒潮と豊富な降水量の影響を受け、豊かで貴重な自然が残された地域です。黒潮の流れは多くの熱帯・亜熱帯性の海洋生物を育み、大量の雨は急峻で複雑な地形を形成することにより、陸上生物の豊かな多様性を生み出しています。
和歌山県立自然博物館は、和歌山の豊かな自然を体験し、楽しく学べる施設として昭和57(1982)年に開館しました。水にすむ生きものの展示を中心に、動・植物、昆虫、貝、化石などの標本も展示・収蔵され、興味を持って楽しみながら学習することができます。
以下、学校の児童、生徒にとって自然博物館内の展示が持つ魅力について、元小学校教員の中澤(地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)のコメントと共にご案内します。
見る!学ぶ!自然を探る!
和歌山県立自然博物館のHPはこちら
展示スペースに入って、まず驚かされるのは、幅15メートルにも及ぶ大水槽「黒潮の海」です。様々な種類の魚たちが優雅に泳いでおり、時間が経つのを忘れてしまうくらいです。
また、大小の水槽では小さな魚や甲殻類、深海魚、淡水魚など、その数なんと約550種6000点の生き物を展示しており、一部、実際に触れることができるコーナーもあります。
水族館というと小学校低学年の遠足のイメージですが、和歌山県立自然博物館は、幼稚園から高校生まで、それぞれが楽しく見学でき、また学校の学習とも関連させて学ぶことができる、課題発見の場とも言えます。(高校生以下及び引率教員は入館料無料)
第2展示室では、化石・岩石・鉱物などの地学分野、貝類、昆虫、鳥類、哺乳類、植物など様々な標本や模型が展示されています。和歌山県湯浅町で同博物館学芸員が発見した肉食恐竜の歯の化石は、当時の和歌山にも恐竜がいたことを証明するものです。また、県内各地の優れた自然を地図上に示し、足元の引き出しを開ければ、それぞれの詳しい解説があるなど、触れて学べる体験的な学習ができます。
大変充実した展示からも分かるように、学芸員の専門分野が多彩であることが、和歌山県立自然博物館の魅力の一つにもなっています。学芸員の方は、自身の調査・研究に力を入れるとともに、専門的見知からの情報を来館者へ易しくひも解いて提供してくださるので、見学に訪れた学校・園の引率の先生からは、「学芸員さんのお話のおかげで、興味を持って観察していました」「毎年学芸員さんより、色々ご指導頂き、園児の中には、将来の職業へと憧れを抱く機会とさせて頂いています」などの感想が寄せられています。
歴史的にみても大変貴重な和歌山の自然ですが、環境の変化にともなって生態系が脅かされてきており、調査の結果、将来絶滅しかねない生物があることが分かっています。また、私たちのライフスタイルと切っても切れない関係にあり、豊かな自然の魅力を知れば知るほど、私たちの暮らしを見つめ直すことの重要性が強く感じられます。
博物館の見学を通して、私たちの暮らしと次世代へと守り伝える自然について、子どもたちと考えるきっかけとされてはいかがでしょう。
・展示案内
・団体での利用案内
「その2」に続く
(中澤 地域教材化コーディネーター・学習指導コミュニケーター)
写真1:大水槽(黒潮の海)の様子(提供:和歌山県立自然博物館)
写真2:ニタリクジラの骨格(入り口ホール外側)(提供:和歌山県立自然博物館)